親から子への学習・生活サポートについて

「早く起きて早く寝る」、「ちゃんとルールや期限を守る」、「ちゃんと目の前のやるべき課題をこなす」、「ゲーム時間を適度に抑える」といった、自立した子どもに育ってほしいと思う親は少なくはないでしょう。そのために、多くのお母さん、お父さんは、お子さんのために、学習・生活への手厚いサポートに励まれていると思います。

ただし、自分の子どもに、上記で挙げたような「自立した人」として育ってほしいのであれば、関わり方について、少し見直して見る必要があるかもしれません。子どもの自立心を願いながらも、真逆のアクションをしてしまっている親がいるからです。

そのような親は、子どもの選択によって生じる課題に対して、「どうしてこんなことをするの?」「どうしてやるべきことをしないの?」と責めたり、「これは禁止」や「これをしなさい」と行動をコントロールし、罰を与えることによって、子どもの自立を阻害してしまっているんです。

親は、子ども自身の選択によって生じる課題は、子ども自身が解決するべきものとして考える必要があります。特に、親子関係がうまくいっていないかもと感じるお父さん・お母さんは、「子どもの選択」に対する、自分自身の「無意識の支配的な態度」に気づく必要があるかもしれません。

例えば、子どもの選択の1つに「勉強をしない」があります。これは親にとっては、重大な問題行動ですよね。この問題行動に対して、スマホやゲームなどを禁止することによって「罰」を与えていませんか?まさにこれが「コントロール」です。

罰を与えるという行為によって、子ども自身の問題を、親がコントロールしたうえで解決してしまうことになり、自立するうえで必要な「解決」というプロセスに対し、子ども自身は関与しないことになるのです。

それは罰を与えたことによって、そしてくり返し行われることで、「勉強をしなくていい」ということが強化されていくからです。「罰を与えられたのだから、もう勉強をしなくていい」ということが子どもの中に根ざしていきます。そして、子ども本人が「勉強」という問題について、自分で考え、アクションをとって、最終的にはどこかで落とし所をつける力が育たなくなってしまいます。

つまり、罰によって一時的に行動を抑制できたとしても、それは表面的なものに過ぎず、むしろ問題解決を遠ざけてしまう可能性が高いんです😢

教育とは、このような「コントロール」のもと行われるのではなく、自立に向けた「サポート」がベースであるべきです💡さきほどのような子どもの問題行動に対しては、子どもが持つべき、または持つことができる選択肢を一緒に考えることが大切です✨

親から子へ、あるべきサポートの形

(1)子どもの「選択」を尊重する

■子どもを「変えよう」とせず、「ありのままのその人」を認める

先の例で言えば、「勉強しない」のか「したくないのか」、どちらの選択にせよ「その子ども自身の気持ち」であり「子ども自身が選んだ選択」であるということを受け止めましょう。

ですが、定期試験、入試、そして今後の社会人生活において「なにかを学ぶ」ということは避けて通れませんから、「勉強しない」という選択肢は、自分のこの先の人生においてデメリットになってしまうということを、子どもに伝えましょう。そのうえで、「勉強しようと思えるようになるためには、どうしたらいいと思う?」という声かけのように、子どもが持つべき、または持つことができる選択肢を一緒に考えることが大切です✨

ちなみに、「勉強を差し置いて、ゲームをするという選択」を選ぶというのが、子どもにとってよくあるパターンですよね。このような場合は、「子どもが持つ関心の対象」に、親も関心を寄せましょう。理解してくれているということが分かれば安心でき、ゲームをするにしても「どの程度にするべきか」を自分で考えられるようになります。

もちろん、「子どものことを本当に知りたくて聞いている」「子どもと一緒に過ごしたい気持ちがあるからゲームに参加しようとしている」ということが分かる態度でなくてはいけません。

■条件付きの愛情ではなく、無条件の愛情を示す

子どもの行動や態度によって子どもへの接し方を変えるのではなく、どんな状況でも変わらないスタンスを持ち続けることが大切です。

「勉強ができないと愛されない」「言うことを聞かないと見放される」といった条件付きの愛情は、子どもの自尊心を傷つけ、健全な成長を妨げてしまいます。

そのためには、「勉強をしない」であったり「テストで赤点をとった」などの失敗や間違いがあったとしても、その子ども自身を否定しないことが大切です。

例えば、「あなたが勉強ができなくて、悲しい。あなたの将来が不安になる。あなたのためを思ってしている」などとは言わないでください。これは脅しであり、この訴えかけにちゃんと応じなければ、見放すぞというメッセージになります。

なにかできないこと、やらないことがあったとしても、「あなたの価値はそれだけじゃない」というメッセージを一貫して伝えましょう。このような無条件の愛情があってこそ、子どもは安心して自分の選択に向き合い、失敗から学び、成長していけるんです✨

仮に、子どもがした危険な行為を叱るときでも、行動を注意するのであって、その子自身の性格を否定しないようにしましょう。(「いつもぼんやりしてるんだから」「後先を考えないからこうなったんでしょ」などのセリフはNGです)

(2)必要な情報や経験を提供する

子どもの自立を支援するためには、子どもが自分で判断・選択できるように、必要な情報や経験を提供することが大切です✨

■選択肢を示す

「これをしなさい」という指示ではなく、「こういう方法もあるよ」「こんな選択肢もあるけど、どう思う?」というように、複数の選択肢を示しましょう。これにより、子どもは自分で考え、判断する機会を得られます。

■経験から学ぶ機会を作る

失敗を恐れて先回りして助けるのではなく、安全な範囲で失敗を経験させることも大切です。

要所要所で親がコントロールし、介入し、失敗を防いでいたら、大人になって独り立ちしたときに、その先の人生に関わるような大きな失敗をいきなり経験することになってしまうかもしれません。

それがはじめての大きな挫折だと、そこからは立ち直るのが難しくなってしまいます。人によっては、引きこもりや最悪の場合は自殺を選択することになってしまうかもしれません。

そのため、小さな失敗を日常の些細なところで経験しておくほうがいいです。その小さな失敗経験から、より良い判断ができるようになっていき、仮に大きな失敗をしてしまったときでも、より良い判断を下すことができるようになっていきます。

(3)見守る姿勢を保つ

子どもの自立を支援するためには、適度な距離を保ちながら見守る姿勢が大切です✨

常に先回りして助けたり、細かい指示を出したりすることは、かえって子どもの自立を妨げてしまいます。子どもが自分で考え、行動する機会を奪わないようにしましょう。たとえ時間がかかっても、子ども自身が考え、行動することで、確実に成長していきます。

そのため、子どもが失敗しそうな場面でも、すぐに介入せず、まずは見守る姿勢を持ちましょう。もちろん、危険が伴う場合は別ですが、安全な範囲での失敗は、貴重な学びの機会となります。

とにかく、子どもには、自分で問題を解決する力が備わっているということを信じましょう。

一方で、子どもが困ったときに、安心して相談できる存在であることが大切です💡完全に放任するのではなく、必要なときにはいつでも援助できる距離感を保ちましょう。そして、子どもが成功したときは一緒に喜び、失敗したときは励まし、次につながるアドバイスをしましょう。このような一貫した支援があることで、子どもは安心して挑戦することができます。

子どもの問題行動とその対処

最後に、そもそもなぜ子どもは「勉強しない」などの問題行動を取り続けるのか?を掘り下げるのも必要です。アドラー心理学では、子どもの問題行動には5つの段階(称賛の要求➡注目喚起➡権力争い➡復習➡無能の証明)があると言われています。こちらを参考にして、「根本的にある問題はなにか?」を考えてみてください。段階ごとに、取るべき対策が変わってきますので、もしお子さんが問題行動を取る、と感じられる場合は、どの段階に当てはまるか、じっくり読み比べてみてください。

なお、個人的な学校現場での感覚では、小学生などの低年齢層は、称賛や注目を求める傾向にあり、年齢が中高生くらいになると、「無能の証明」の段階であることが多いように感じます。(個別指導塾では小学生でも「無能の証明」状態にある子どももいましたが!)

1.称賛の要求

子どもが親や周囲の大人から認められたい、褒められたいという欲求から起こす行動です。

これは子どもの成長過程で最も基本的な段階です。子どもは、親や周りの大人から「よく頑張ったね」「すごいね」といった言葉をもらいたくて、様々な行動を起こします。例えば、宿題を終えた後に「見て見て!」と親に見せに来たり、何か新しいことができるようになったときに何度も披露したりする行動がこれにあたります。

この段階での適切な対応は、子どもの努力や成果を具体的に認め、励ますことです。ただし、過度な称賛は逆効果になる可能性があるため、子どもの行動や成果に対して具体的に言及することが重要です。「すごいね!」だけでなく、「この漢字、丁寧に書けているね」「自分で考えて解決できたんだね」といった具体的な言葉かけを心がけましょう✨

2.注目喚起

子どもが周囲の注目を集めたいという欲求から起こす行動です。

これは、称賛の要求よりもやや強い段階で、必ずしもポジティブな行動とは限りません。子どもは、たとえネガティブな反応であっても、とにかく自分に注目が集まることを求めます。

「わざと失敗したふりをする」、「あえて不適切な言葉を使う」、「兄弟げんかを始める」などの行動が挙げられます。叱責や注意も「注目」の一種となり、かえってその行動を強化してしまう可能性があるため、対処のバランスが難しい段階です。

ネガティブな要素に注目するのではなく、子どもが適切な方法で自己表現をしたときに、積極的に認め、具体的な行動を褒めることで、望ましい行動を強化することができます。

また、定期的に子どもと1対1で向き合う時間を作り、子どもの話に耳を傾けましょう。この時間があることで、不適切な方法で注目を求める必要性が減少します。

そして、子どもに「どうしたら自分の気持ちを適切に伝えられるか」を具体的に示してみましょう。「怒って叫ぶかわりに、『話を聞いてほしい』と言ってみよう」とか「困ったときは『手伝ってほしい』と言っていいんだよ」など、適切なコミュニケーション方法を提案しましょう💡

3.権力争い

子どもが自分の意志を周囲に主張したいという欲求から起こす行動です。

子どもは「やる・やらない」において、「自分の意思を通したい」「自分で決めたい」という欲求が強くなっていきます。これは自我の発達における重要な段階なのですが、時として親との対立を生むことがあります。

このような段階での衝突を、「親と子、どちらに決定権があるべきか」「どちらが、どちらに従うべきか」という争いとするのではなく、むしろ、子どもの自主性を育てるチャンスと捉え、お互いが納得できる解決策を一緒に考えるようにしましょう。

以下の流れを基本とします。

1. まず子どもの気持ちを受け止める

相手の欲求を認めるような声掛け、例えば「そうだね、〇〇したいという気持ちはよく分かるよ」、なども、子どもに「自分の意見が尊重されている」と感じてもらいやすくなり、、親に対し協力的になります。

2. 親の考えも穏やかに説明する

例えば、「遅くまで起きていると、明日の学校で眠くなって集中できないかもしれないね」「宿題をためすぎると、後で大変になってしまうよ」といった具合に、なぜそうしてほしいのかの理由を、子どもが理解できる言葉で説明します。このとき大切なのは、命令や脅しではなく、子どもが自分で考えられるような説明を心がけることです。また、説明するタイミングも重要で、子どもが感情的になっているときは避け、落ち着いているときを選びましょう。

3. 両者が受け入れられる妥協点を探る

例えば、「これをしなさい」という命令形ではなく、「AとBどちらがいい?」という選択肢を提示してみましょう。また、「早く寝なさい」という命令形ではなく、「明日は早起きだけど、何時に寝るのがいいと思う?」というオープンクエスチョンでの選択肢を提示してみましょう。このように、子どもに選択肢を与え、自分で決める機会を作ることで、子どもは「自分の意見が尊重されている」と感じ

4.復讐

子どもが大人への不信感から、意図的に相手を傷つけようとする行動を起こす段階です。

この段階では、子どもは自分が傷つけられたと感じている経験への「仕返し」として、他者を傷つける行動を取ります。例えば、「大切なものを故意に壊す」、「相手が嫌がることを意図的にする」、「暴言を吐く」、「暴力的な行動を取る」などの行動が見られます。

子どもがこれらの行動をとった場合、子どもの行動を単に叱るのではなく、その背景にある感情に寄り添い、信頼関係を再構築することが重要です。どのようなキッカケでどのような感情になっているのかを探り、その感情を受け止めましょう。そして、適切な感情表現の方法を一緒に考えましょう。子どもが安心して気持ちを表現できる環境を作ることで、徐々に適切な感情表現の方法を学んでいくことができます。

5.無能の証明

子どもが自分の無能さを証明しようとする行動を起こす段階です。これは問題行動の中で最も深刻な段階と言えます。この段階では、子どもは「自分にはどうせ何もできない」「やってもムダだ」という諦めの気持ちから、意図的に失敗したり、挑戦を避けたりする行動を取ります。

「どうせ私には無理」と最初から諦める態度は分かりやすい例ですね。他にも、「課題に対して形だけの取り組みをする」(答えを写すなど)、「自分の能力以下の簡単なことしかしようとしない」、「新しいことへの挑戦を完全に拒否する」などが当てはまります。この状態は、これまでの失敗体験や否定的な評価の積み重ねによって形成された、深い自己否定感が原因となっていることが多いんです。

この段階では、子どもの自己肯定感を少しずつ回復させることが最も重要です✨そのためには、大人が一方的に指導するのではなく、子どもと共に歩む姿勢を持ち続けることが大切なんです。具体的な方法としては、子どもが確実に達成できる、スモールステップの目標を設定し、小さな成功体験を積み重ねられるようにしましょう。そして親は、些細な進歩でも具体的に認めましょう。望ましい結果が得られなくても、努力した経過を褒めるなどです。完璧を求めず、チャレンジする勇気を褒めることが必要です。「できた」という実感と同時に、「失敗しても大丈夫」という安心感が生まれます。

コヤマ ケイコ

Shirokuma Study Session
English Learning Designer

しろくまスタディセッション代表。英語教育・学習マネジメントがテーマの個人事業主です。英語の学習をより効率的かつ効果的なものにするべく、教育方法をデザインしています。英作文やスピーチを添削をする傍ら、本を書いたり、学習ツールを作成したりしています。