言語には、ことばを並べるときのルールがあります。日本語にも、もちろんルールはあります。ただ、それは英語のルールよりも緩いんですね。特に喋りことばでは、順番が前後しても通じてしまいます。だから私たちにはあまり「ことばの種類の違い」「ことばの順序」を意識しません。以下の文章を見比べてみてください。まずは丁寧な日本語の表現と、その英訳です。
私は / 昨日 / 熱があった / ので、/ 早く / 寝た。
Because / I / had a fever / yesterday, / I / went to bed / early.
分かりやすくなるように、ことばのカタマリごとにスラッシュ線( / )をいれています。どちらもそれぞれ正しいルールに則って書かれた文ですが、すでに2つの文章のなかで違いがあるのがわかりますか? ことばの順序以外で見つけられますか?
日本語では「私は」は1つしかないのに対し、英語では主語である「 I 」(私は)が2回使われています。英語では、「熱がある状態」と「早く寝る動作」に対して、それぞれ「だれの状態なのか」「だれが行った動作なのか」を明確に示すために、主語をそれぞれに置かなければいけないんです! 日本語では主語と状態/動作の関係を、英語ほどはっきりと厳密に書かなくていいので主語を省略してしまうんです。むしろ、「私は昨日熱があったので、私は早く寝ました」という文のほうが不自然ですよね。
※英語も条件次第で省略しますが、発展的なルールで頻度も低いので今回は省略します。
この「日本語では主語を省略する」「英語では主語を省略しない」ということを理解しておかないと、日本語から英語に訳そうとするときに大変な事故を起こしてしまうんです! 以下がよくある誤りの例です。なにがどう間違っているのか考えてみましょう!
以下の文には「主語にまつわる誤りが2つ」、「表現にまつわる誤りが1つ」、「チャレンジ要素として、まだ伝えていないことで3つ」混ざっています。
昨日は / 頭が / いたく / て / 宿題は / できなかった。
Yesterday was head was hurt, and homework couldn’t do.
正解に入る前に! 前のページで学んだ「英語と日本語における違い」を、心のなかの後輩に説明してみましょう。実在する後輩でもいいですよ。うまくできなかったらもう1度14ページを読みましょう! できましたか? それでは、訂正箇所を一緒に見てみます!
昨日は / 頭が / いたく / て / 宿題は / できなかった。
Yesterday ④was ①△head was ②hurt, and ③△homework couldn’t do.
① headのみだと「誰の頭?」となりますので所有格をつけて「my head」(私の頭)に!
② 「頭痛がする」という表現は色々な書き方があります。
My head was hurting me. (頭が私を痛めつけていた) hurtは「~を傷つける」
I have a headache. (私には頭痛がある)※頭痛があるのは私ですからIを置きます。
なお昨日の出来事ですので動詞を過去形にして「I had a headache.」となります。
③「宿題」だと誰のものか分からないので「私の宿題」とします。=「my homework」
宿題をするのは「私」ですので主語にIを置きます。=「I couldn’t do my homework」
④「昨日」はなにかをする主語ではなく、時間の情報ですので、その場合wasは不要! 時間や場所の情報を「副詞」と言い、この要素は文頭や文末に置くことができます。
上記4点を踏まえて英文を書き直すと、以下の通りになります。
昨日は / 頭が / いたく / て、 / 宿題は / できなかった。
① Yesterday / my head / was hurting me, / and / I couldn’t do / my homework.
② Yesterday / I had a headache, / and / I couldn’t / do my homework.
2種類が完成しましたね。ちなみに使用件数をgoogle検索で調べたところ、My head was hurting meは約7,010件、I had a headacheは約8,870,000件でした。現在形の動詞で調べても同じような結果です。(後者だと日本語サイトがかなりヒットするのが大きいのかなとは思います!)
書いたフレーズが世界的に使われているものなのか調べる方法
検索するときに、半角記号の “ ” のなかに調べたいフレーズをいれると、インターネット上の使用件数を調べることができます。
(例)”I have a headache”
日本語のことば通りの順に英訳することが、英作文で間違いが増える原因の1つです。全世界のことばを1つの家系図と見たとき、親兄弟の位置にある言語同士は似たルール・表現になります。日本語と英語は、親族関係にはないんです。ローマ字と漢字ですから、見た目も全然違いますし、当然ですね。
ドイツ語とスウェーデン語はイトコ関係のようなもので単語や発音・ルールも一部似ていたり同じだったりします。スウェーデンに留学にきたドイツ人のスウェーデン語テストは、日本人の私よりはるかに出来がよかったんです!
郷に入っては郷に従え! 英語を使うなら英語スピーカーの思考になりましょう。
とはいえまずは日本語のおさらいです。英文の比較対象として、ふだんの会話をことばのカタマリごとに分解します。下記の英文を見てください。
ケイコ (あなたが) / 漫画/ を読む / とき、 / (あなたは) / 普段 / どこで / (漫画) / を読みますか?
ク マ (私は) / たいてい / ソファ(の上)で / (漫画) / を読みます。
カッコの中にあることばは、日本語では省略してしまう部分です。英語スピーカーの思考になるには、まずこれらをハッキリとさせることから始めますよ!
今の日本語を英語の語順に落とし込むにあたって、基本的な配置を確認しましょう。「程度・頻度」「場所」「時間」の情報は、場合によって位置が変わりますが、いったん下記の順序を基本スタイルとして覚えましょう。少し太字になっている「だれ・なにが」と「~する・である」の情報が最も重要ですので、まずはこの2つにフォーカスしてくださいね。
- だれ・なにが
- どの頻度・程度で
- ~する・である
- だれ・なにを
- どこで
- いつ
ではこの枠にクマのセリフを落とし込みます。わたしのセリフは疑問文なので、いったん置いておきましょう。エッセイでは使わないですからね。
- わたしは
- たいてい
- ~を読む
- 漫画
- ソファの上で
- ー
英語のなかで重要なのは「なにが/だれが」(主語)「どうする」(動詞)という、文の大枠なんです。ですから、その2つの要素を序盤で言ってしまいます。(頻度の情報は動詞に付くオマケ要素なので、動詞の前に来ています)
「だれを/なにを」(目的語)の要素は、行う動作によって必要であったり、必要でなかったりします。
★余談ですが、「私は公園を走る」という場合、公園という情報は厳密には、「公園にて」という場所の情報なんですね。英語では灰色の要素に置かれます。そうすると、「私は」(主語)「走る」(動詞)という青い線の要素だけが残り、黒い線の要素(目的語)は使わないことになります。
さて、今度は、上記の「語順を入れ替えた日本語表現」を、英語に変換していきましょう。日本語のマスを見ながら各要素を英語に変換してみてください。いっきにスクロールすると、答えが出てきてしまいますので注意してくださいね!
気をつけるべきポイントは「私は」「する」の位置です。もう完璧ですね? もう少しスクロールすると、答えがありますので確認してください。馴染みのないマニアックなルールとして「数の概念」と「場所を表す表現」がありますので、次のページで詳しく説明します!
- わたしは
- たいてい
- ~を読む
- 漫画
- ソファの上で
- ー
- I
- often
- read
- comics
- on the sofa.
- ー
英語の考え方
細かいところのルールなので少し解説が長いです!
① 英語では、本など1冊・2冊と「数えられるもの」は、複数形で表す(語末にsをつける)のが自然です。そのため今回は「a comic」ではなく「comics」となっています。「a comic」と書くと「とある1冊の本」や「本たるものとは(本の特性を説明する言い方)」になってしまうんです。「総称の不定冠詞」というやつなんですが、細かすぎるのでいったんスルーしちゃいましょう!基本は複数形で覚えておいてください。
② 日本語では「ソファで」と言うところを、英語表現に寄せた表現「の上で」に変えましたね。日本語の「場所」を表す「で」はとても便利で、あらゆる場所の「中」と「上」にいる状態を表すことができます。「学校で」、「宇宙で」、「ソファで」、どれも同じ「で」です。ですが英語では「学校(というある一点)で」(at)、「宇宙(という空間の中)で」(in)、「ソファ(の上)で」(on)と考え、やっぱりハッキリ具体的に表すんですね。今回は「ふだん過ごす部屋のソファの上で」という意味が伝わるので「on」が自然です。
「the」についてですが、①で「a」は「とある1つの」という意味になると伝えました。今回は「とある(不特定の)ソファ」ではなく、「(ケイコが普段使っている、あの黄色い)ソファ」なので、「具体的にイメージ可能で、それがなんだか特定可能の」という意味を持つ「the」を使います。ベッドも同じ理由で「on the bed」と表します。
こんな細かいルール、最初はどうでもいい!?
「a」と「the」の区別は日本人には馴染みのないルールです。「on」や「in」などの前置詞は大切ですが、「場所の区別」に関しては、数をこなしていくうちにすぐ覚えます。ですから、いっきに覚えなくて大丈夫です。あくまでも上記の2点は「発展編」ですよ! このページで絶対に抑えていてほしいのは「だれが」「どうする」ということばの位置です!
さて、なんとなく文章の構成について理解が深まったでしょうか? まだ自信はないですか? 表現を覚えるためにも、もう少し変換脳を鍛えておきましょう。
①足りない日本語を補完する、②英語の語順に並び替える、③英語に訳す、の3ステップで進んでいきます!
練習問題と同じように、クマのセリフを英語に変換しましょう。答えは次のページです。
STEP 1 カッコ内に入る日本語を補足する
STEP 2 英語の語順に日本語を並び替える
STEP 3 日本語の単語ごとに英語に訳す
指示に習って、ノートにやってみてくださいね!全部で3題あります。まずは1問目です!
ケイコ What do you usually do after school?
ク マ 放課後は、たいていカフェでコーヒーを飲みます。
STEP 1 カッコ内に入る日本語を補足する
(①だれが?)/ 放課後は、/ たいてい / カフェで / (②どれくらいの量の?)コーヒー / を飲みます。
STEP 2 英語の語順に日本語を並び替える
- だれ・なにが
- どの頻度・程度で
- ~する・である
- だれ・なにを
- どこで
- いつ
STEP 3 日本語の単語ごとに英語に訳す
できましたか?
(私は)放課後は、たいていカフェで(いくらか)コーヒーを飲みます。
のようになっていればOKです。
答えを確認してみましょう!
- I
- usually
- drink
- some coffee
- at a cafe
- after school.
もしカップ1杯のコーヒーだったら、「a cup of coffee」にできます。
では2問目です!
ケイコ What do you always eat in the morning?
ク マ 朝はいつもごはんと焼き魚を食べます。
STEP 1 カッコ内に入る日本語を補足する
(だれが?)/ 朝(に)は / いつも / ごはんと焼き魚 /を食べます。
STEP 2 英語の語順に日本語を並び替える
- だれ・なにが
- どの頻度・程度で
- ~する・である
- だれ・なにを
- どこで
- いつ
STEP 3 日本語の単語ごとに英語に訳す
できましたか?
(私は)朝(に)は、いつもごはんと焼き魚を食べます。
のようになっていればOKです。
答えを確認してみましょう!
- I
- always
- have/eat
- rice and griled fish
- ー
- in the morning.
coffeeもですが、riceとfishは「1つ2つのように数えられない名詞」なのでaや複数形は使えません。お米は1粒2粒と数えることができますが、朝ごはんに1粒食べた、とは言わないですね。たくさんの粒をまとめて認識しているために、数えられない名詞となっています。魚は、たくさんの種類がいるのを一括りにして「魚」と認識しています。
次はラストスパート!3問目です!
ケイコ What do people do on their free day?
ク マ 空いてる日はいつも友だちと新宿で映画を観ます。
STEP 1 カッコ内に入る日本語を補足する
(①だれが?)/ (②だれの?)空いてる日(に)は、 / ときどき / (③だれの?)友だちと / 新宿で / 映画 / を観ます。
STEP 2 英語の語順に日本語を並び替える
- だれ・なにが
- どの頻度・程度で
- ~する・である
- だれ・なにを
- どこで
- いつ
STEP 3 日本語の単語ごとに英語に訳す
できましたか?
(私は)(私の)空いている日(に)は、ときどき(私の)友だちと新宿で映画を観ます。
のようになっていればOKです。
答えを確認してみましょう!
- I
- sometimes
- see
- a movie
- with my friends
- in Shinjuku
- on my free day.
「with my friends」と、一緒に動作を行う人の情報が加わってきましたね。これは通常、場所の前に置きます。
「みる」には3種類あり、空を飛ぶ鳥を見るように「ある一点を見る」なら「look at」、スポーツの試合を観るように「動くものをじっと観る」なら「watch」、映画館で映画を観るように「見るものが自然と視界に入ってくる」なら「see」を使います。
映画は数えられる名詞ですが、たいてい観るときは1度につき1本が一般的なので「a movie」と言います。
以上で今単元は終わりです。ちょっと長かったですが、英語の語順に慣れることはできましたか?
第1章もこれで終わりました。おつかれさまでした!