Chapter 2-1 「説得力」ってなに? それがなかったらどうなるの?

FREQUENTLY ASKED QUESTION

「論理的な思考を持て」とか「説得力のある文章を書け」と言いますが、それに必要な「具体例」や「根拠」ってどんなものですか? それがないと、なんでダメなんですか?

上記の質問にお答えするには、きっと例文を見比べてもらうのが早いと思います。以下の文章のなかから、あなたが「説得力があるな」と感じるものを、いくつでも選んでみてください。

① 私は毎日10kg近いランドセルを背負っていたが、重すぎて肩が痛くなり登下校だけで疲れた。そのため小学生にランドセルを強制するべきではないと思う。

② 1月の修学旅行先は沖縄じゃなくて北海道がいい。

③ 美少女戦士セーラームーンは15カ国で放送されており、世界的に有名な作品だ。

④ 住宅街の真ん中に幼稚園をつくるのは、住民に対し迷惑なので禁止にするべきだ。

⑤ 犬はもふもふしていてかわいいので、私たちの職場で飼うべきだ。

いくつ選びましたか?

では1番から確認していきましょう。1番の文章を解体すると以下の構造になります。

主張「小学生にランドセルを強制するべきではない」

なぜならば

経験「自分が10kg近いランドセルを背負っていたとき身体的ダメージがあった」

具体的な数字を使って、どのような症状があったかを詳しく説明しています。いかにランドセルが小学生にとって負担であるかが伝わってきますね。こちらは、「説得力のある文章」といえます!

具体的に説明された個人の経験談には、説得力がある!

2番目の文章はどうでしょうか? 解体してみましょう。

主張「1月の修学旅行先は沖縄じゃなくて北海道がいい」

この投書を受け取った学校の校長先生は、納得するでしょうか? 

むしろ「なんで?」と感じると思います。それを尋ねてくれたらいいですが、相手にしてくれない可能性もありますね。

では、校長先生を納得させるに十分な「理由」を考えてみてください。もっと具体的に言うと、「1月の北海道のほうが、1月の沖縄よりも、修学旅行先として適していると思う理由」です。

実際に1月に沖縄へ行く都内住みの生徒がいました。その話を聞いたとき、私は「沖縄といえば日本で一番きれいな海なのに、1月だといくら沖縄でも海を存分に楽しむことはできないんじゃないかなぁ。せっかくの沖縄旅行なのにもったいないなぁ」と思いました。冬の北海道のほうが、冬の沖縄よりも楽しくて学べるということを、理由に挙げられたらいいですよね。(真冬の北海道は観光シーズンで、旅費が上がるので現実的ではないかもしれないですが!)

なお、「考え」に正解はありません。思いついたことを大切にしてくださいね!

② 2つのものを比べるときは、優劣をしっかり述べることで説得力がでる!

3番目の文章を見てみましょう。わたしがセーラームーン大好きなので作った例文です。

主張「美少女戦士セーラームーンは世界的に有名な作品だ」

なぜならば

根拠「世界15カ国で放送されている」

この文章も、1番と同様、15カ国という具体的な数字で、主張を支えています。

もし試験などで調べ物ができず、具体的な数字が分からないとき、あなたならどうしますか?

そのときは、もし分かっていれば具体的な国名をいくつか挙げることができます。「例えばアメリカやフランスで、英語とフランス語に訳されている」つまり「世界の多くの人が理解できる」などと展開できますね。

実際に数字を1つ1つ覚えるなんて、とても大変ですし、数字を覚えるくらいなら英単語のスペルを覚えてほしいです。なので具体例になる数字を覚えようとするのではなく、汎用性の高い表現(世界の多くの人が~する、など)のレパートリーを増やすよう心がけてみてくださいね!

③ 数字だけでなく、具体的な地域名などを2つ挙げたり、ざっくり「たくさん」と言うことで説得力がでる!

次は4番目の文章です。2018年に話題になったので採用してみました。

主張「住宅街のど真ん中に幼稚園をつくることは禁止にするべきだ」

なぜならば

感情「住民にとって迷惑だ」

あなたが3才児のお母さん・お父さんで、近くに幼稚園がなく困っているときに、このような意見を聞いたらどう感じるでしょうか? 少なくとも、この意見によって説得されることはないですね。なぜでしょうか?

この文章には「具体的に、なにがどのように迷惑なことであるか」の説明がされていません。「迷惑だ」というのは個人的な感情でしかないんです。

「建設予定地の周囲にはご老人が多く住んでおり、日中は家にいる」という状況を説明し、「ピアノの音が響いては、落ち着いて生活できない」と具体的に困っていることを伝えたいですね。

この文章は「説得力のない文章」です。

④ 個人的な感情を述べるだけでは説得力はないので、具体的な問題点を考える!

最後に5番の文章です!

主張「犬を職場で飼うべきだ」

なぜならば

主観「犬はもふもふしていて、かわいい」

4番と同じく「かわいい」は「個人的な感情」で△!

残念ながら、「説得力のない文章」です。

でも待って、「犬はもふもふだ」という、理由が加わっている……4番よりも理由を1つ多く付け足しているのでOKでしょうか?

いいえ、ダメです! この文章は説得力があるとは言えません! 

犬がもふもふしていればしているほど、職場で飼うことへの正当性が増すでしょうか? 固い毛をした柴犬よりも、くるくる毛のトイプードルのほうが、飼うことへの正当性があるでしょうか? 

そんなことないですね。まったく関係ありません。ぱっと見たところ大丈夫そうだと思っても、このようにより具体的な名詞で例えて考えることで、本当に論理的な意見かどうかを確かめることができます。理由に対する理由をつけることは大切ですが、内容はしっかり吟味しましょう。

⑤ 不安になったら具体的な名前を出して比較・検討してみる!

 

5種類の文章を検討してみたところ、「説得力の重要性」や「説得力を出すポイント」が見えてきましたね。

説得力ある理由付けができなければ、反対の立場にいる人々を説得することができません。さきほどの保育園VS近隣住民のようにです。

英検®受験者さんにとって、英作文を課題で書く人にとって、反対の立場にいるのは試験管です。試験管に納得してもらう文章にしなければ、書いたところで合格やOKがもらえず、取り組んだ意味をなさないのです。

最後にポイントをおさらいして終わります。

① 具体的に説明された個人の経験談には、説得力がある!

② 2つのものを比べるときは、優劣をしっかり述べることで説得力がでる!

③ 数字だけでなく、具体的な地域名などを2つ挙げたり、ざっくり「たくさん」と言うことで説得力がでる!

④ 個人的な感情を述べるだけでは説得力はないので、具体的な問題点を考える!

⑤ 不安になったら具体的な名前を出して比較・検討してみる!

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